鼻(副鼻腔炎)
鼻炎
鼻腔内の洗浄吸引と薬物療法を行います。
必要に応じて細菌の検査をします。
鼻腔内の治療のために洗浄する理由は、吸引だけの場合よりも清浄力が優れているからです。
副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔炎は副鼻腔の粘膜と骨が化膿する病気です。
発生すると副鼻腔(鼻の両側にある空洞)に膿が貯溜するので蓄膿症といわれます。
このように膿が貯留する病気は多く存在しますが、どの場合でも治療の原則は膿を出すこと(排膿)です。
私は副鼻腔炎の治療として、くり返し上顎洞を洗浄する方法を行っています。
この時大切なことは膿の細菌と有効な薬(抗菌剤)を調べ、有効な薬を使うことです。
この方法は、入院の必要がないこと、副鼻腔構造を変えないこと、治療後の風邪の時繰り返し発生する副鼻腔炎にも同じ治療を行えること、手術の場合発生することがある'のう胞'は発生しないことなど、多くの利点がある治療法(上顎洞穿刺洗浄療法)です。
(1)小児の場合
私は上顎洞穿刺洗浄療法を2歳以上の小児に行っています。
この治療法と成績を1979年に日本耳鼻咽喉科学会で発表し、
論文を1980年に日本耳鼻咽喉科学会会報に掲載しました。
発表した症例の中に受診を続けている人達がいますので、
彼らからその後の長期の成績を知ることができました。
それは、小児副鼻腔炎は小児期にこの療法を行うと治癒することです。
成人副鼻腔炎は小児期に始まることが多いので、
小児期の治療が大切であることを証明した貴重な実績です。
また難治な中耳炎、頑固な咳を伴う咽喉頭炎(喘息と診断されていることもある)
の原因になる場合には、この治療がしばしば必要になります。
なお、手術療法は絶対に行ってはなりません。
(2)成人の場合
薬だけの治療では治らない理由は、長く経過しているためです。
この場合手術が勧められることが多いようですが、
その前に上顎洞穿刺洗浄療法を行わなければなりません。
その理由は、多くの人の副鼻腔炎が手術をしなくてもよいところまで治るからです。
手術はこの治療の後で考えればよいでしょう。
手術は何十回洗浄しても多量の黄色膿汁が排出される場合にだけ行い、
そのときには全ての粘膜を除く手術を行います。
粘膜は壊死状態にあり、回復の見込みはないからです。
しかしこのようなケースは最近は稀でしょう。
(3)鼻茸
排膿をくり返すと鼻茸が縮小します。
その時に手術すると出血が少ないので、入院の必要はありません。
アレルギー性鼻炎
(4)診断と治療の方法 初診時にアレルギー反応による鼻炎か、何がアレルギーの原因かを、15分で判定できるスクラッチ法(アレルゲンエキスによる皮膚反応で確認する方法)を行って診断します。 副鼻腔炎の頭痛の特徴は前頭部や眼の周囲を中心とした強い痛みです。 2歳のときからあった喘息が8歳になると起こらなくなり、代わってアレルギー性鼻炎が始まったが、 上顎のむし歯(う蝕歯)の炎症が上顎洞に波及して発生する上顎洞炎です。
治療法は主に点鼻薬を使います。点鼻薬を主に使用する理由は効果の強さと使用回数の調節が可能なためです。
補助に内服薬を用いますが、その理由は長期間同じ薬をのみ続けることは避けなければならないからです。
副鼻腔炎(細菌性、アレルギー性共に)を併発している時には、上顎洞穿刺洗浄療法を行います。
手術は禁忌と考えています。
(5)頭痛
痛みは痛み止めでは止めることができません。
アレルギー性鼻炎がある人が副鼻腔炎に罹ると、強い痛みが発生しますが、診断が難しいので適切な治療ができないことがあります。
しかし'痛み'は、一回の上顎洞洗浄療法で消えます。
原因不明の頭痛の診断に大変役立つ方法でもあるので、不明の時試す価値があるでしょう。K.S.(9歳) 2005年7月25日 初めて来院
その後起こるようになった強い頭痛(前頭部痛)のため不登校を繰り返していた症例です。
診断と治療の問題を紹介します。
経過:
頭痛が起こり、小児科で喘息の薬と鎮痛薬を処方してもらっていた。
頭にコブをつくった時CT撮影を行い、副鼻腔炎が発見され、耳鼻科受診をすすめられた。
抗アレルギー剤とマクロライド投与を受けたが治らないため当院を受診し、副鼻腔炎の上顎洞洗浄治療によって副鼻腔炎が軽快すると、頭痛が消失し登校するようになった。歯性上顎洞炎
一般には上顎洞の手術が行われますが、そうしなくても治すことができます。
原因歯とその周囲の骨髄炎をきれいに除いた後、上顎洞洗浄療法によって治療すると上顎洞粘膜の炎症はきれいに治ります。